金魚玉の壊しかた

それにしても、である。

私は気ままな一人暮らし。
このように他人を数日世話することになっても、特にとやかく言われることもないが。

遊水のほうは、私の所に来た時点で家や店には連絡済みだったのか……

このように突然家を空けては、心配する者もいるのではないかと私は気になった。


しかしそのことについて私が家人に伝えに行こうかと尋ねても、遊水はその必要はないの一点張りだった。

つまり家族はおらず、金魚職人と言っても一人で盆栽をしているということなのだろうか。


ここはおそらく、立ち入ってはならない彼の境界線なのだろうと思い、詮索はやめにしたのだが──


一つ、奇妙な出来事があった。


彼が私の長屋に来た次の晩、
夜半過ぎに、ボソボソと人の話し声が聞こえて私は目を覚ました。

すわ、本物の泥棒夜盗の類かと視線だけ動かして部屋の中を探ると、隣で眠っていた遊水の姿がない。

話し声のするほうへとそっと視線を動かすと、
動き回るなとあれほど言ったのに、彼は戸口の横にある窓のそばに立っていて──

そして、外にいる何者かと言葉を囁き交わしている様子だった。


それを目にした私は一瞬、

盗賊の中には「引き込み役」と言って、先んじて目的の家屋敷に潜り込み、仲間を引き入れる役割の者がいることを思い出し、

よもや──と体の中が冷えるような心持ちがした。