これまで生き物の絵を描き続け、生き物について思案を巡らせ続けてきたのに私が全く考えもつかなかったことをさらっと口にした男に、私は衝撃を受けた。
「驚いた……。それは、私には至ることのできなかった考えだ。やはり、生き物を育てている者の考えは違うな」
すると遊水は腹を抱えて大笑いして、キョトンとしている私を「真面目だねェ」とからかった。
「常日頃から誰がそんなこと考えてるって? 俺も今、亜鳥と話していて初めて思いついたことだぜ」
遊水が何でもないことのようにそう言うのを聞いて、私と話している中でその考えに至ったという遊水の高い知性に私はまた驚き──
──惹かれた。
彼もまた私の物の見方や考え方に惹かれてくれた──と思うのは、私の勝手な自惚れなのだろうが、
それでも、
「成る程、金魚を育てながらそんな風に考えたことはなかった。
こいつは──面白いね。亜鳥の物の考え方は、貴重だな」
そう言った遊水は、言葉を失っている私に対して、少なくとも何かしらの興味を持ってくれた様子だった。
「こいつは、盆栽にも役立ちそうだ」
遊水はそう付け足して──ここに私は、私と彼との決定的な思考の違いを見た。
私が「不思議だから」「知りたいと思うから」という単純な興味のもとに物事を捉えていたのに対し、
彼の高いインテリジェンスは、徹底的に物事の実用性を重視する思考に裏打ちされたものだった。
これが、
私のまだ知らない彼のもう一つの人生──人心を見抜き、利用し、操ることで生き抜いてきた──彼の人生に大きく関係した才能であり、
遊水と名乗ったこの男の、鋭い洞察力や、天才的とも呼べる優れた論理的思考が真に発揮される場が学問や金魚の盆栽とはまた異なるフィールドであったことを私が知るのは、
出会ったこの時より一年以上も先のことだ。
「驚いた……。それは、私には至ることのできなかった考えだ。やはり、生き物を育てている者の考えは違うな」
すると遊水は腹を抱えて大笑いして、キョトンとしている私を「真面目だねェ」とからかった。
「常日頃から誰がそんなこと考えてるって? 俺も今、亜鳥と話していて初めて思いついたことだぜ」
遊水が何でもないことのようにそう言うのを聞いて、私と話している中でその考えに至ったという遊水の高い知性に私はまた驚き──
──惹かれた。
彼もまた私の物の見方や考え方に惹かれてくれた──と思うのは、私の勝手な自惚れなのだろうが、
それでも、
「成る程、金魚を育てながらそんな風に考えたことはなかった。
こいつは──面白いね。亜鳥の物の考え方は、貴重だな」
そう言った遊水は、言葉を失っている私に対して、少なくとも何かしらの興味を持ってくれた様子だった。
「こいつは、盆栽にも役立ちそうだ」
遊水はそう付け足して──ここに私は、私と彼との決定的な思考の違いを見た。
私が「不思議だから」「知りたいと思うから」という単純な興味のもとに物事を捉えていたのに対し、
彼の高いインテリジェンスは、徹底的に物事の実用性を重視する思考に裏打ちされたものだった。
これが、
私のまだ知らない彼のもう一つの人生──人心を見抜き、利用し、操ることで生き抜いてきた──彼の人生に大きく関係した才能であり、
遊水と名乗ったこの男の、鋭い洞察力や、天才的とも呼べる優れた論理的思考が真に発揮される場が学問や金魚の盆栽とはまた異なるフィールドであったことを私が知るのは、
出会ったこの時より一年以上も先のことだ。



