金魚玉の壊しかた

それは、返さずとも

これ以上踏み込むなと、
聞いてくれるなと、

そういう意味だった。




言われて私は、やっと気づく。

「君子危うきに近寄らず」はどこへやら、だ。

この時既に、私の心は彼に囚われていたのだろう。


遊水というこの男のことが、
こんなにも気になって、
こんなにも知りたいと──

そう思ってしまっていたのだから。





そして奇しくも、

己が武家の娘であり、
雨宮家の娘であるという、

己の身分と立場とを知られたくなかった私にとっても


彼が語った「三脱の教え」は大変都合の良いものであった。