金魚玉の壊しかた

金魚は大陸から伝わってきた魚だ。

この場合の「盆栽」というのは、
諸君らが思い浮かべる小さな松の木やら何やらの話ではなくて、

金魚の「養殖」のことである。

確かに、金魚という魚の飼育や殖やし方を詳しく知るには、
漢語で書かれた大陸の書物を読む必要があるのかもしれない。


それにしても、だ。


「遊水、君は……この町は長いのか?」

「まァざっと十年以上ってトコかねェ」


そう答える金魚屋を、私はマジマジと見下ろした。


「ただの金魚屋か?」


金魚屋がなんでまた毒塗りの刃物傷で担ぎ込まれる?

どういった理由で毒消しなんぞを携帯している?


何より、気になるのが──やはりこの金髪に緑眼だ。


随分と目立つ容姿だ。
目立ちすぎる。

にも関わらず、今日までこの城下でこんな男の噂は聞かなかったのは──何故だ?



「ふ」と──私の表情を見た遊水は、謎めいた笑いを作った。

また、こちらが虜にされそうな……思わず見とれる笑顔だった。


「絵師先生、先生は『三脱の教え』ってのを知ってるかい?」


そうして彼は、私に江戸の「粋」を説き──