金魚玉の壊しかた

この遊水という男は何者なのだろう。


どういう経緯で母親と二人旅をしていたのか……
この町には流れてきたということなのだろうか。


それに、

「遊水、君はどうして漢文の書物が読めるのだ?」

私は聞きそびれた質問をした。

見たところ、町人のなりだが……教養があるのか?

「漢文?」

「そこにある本草学の書物は漢語で書かれている」

「あァ──そいつは、仕事柄でね」

遊水はそんな答えを返してきた。

「漢語が読めなくちゃァ、金魚の盆栽はできねえ」

「金魚?」

「そこの書物にも何か載っていねえかと、さっきはついでに調べさせてもらってたのさ」


私は、遊水が見て開きっ放しになっていた書物を振り返った。

魚の記載があるところが開かれていた。



遊水は、ニヤリとして、

「こちとら金魚屋でね」

と言った。



そうか──。


「絵師先生の描く絵も見せてもらったが……興味深いね」


遊水の言葉で、ようやく納得が行った。


それで、生き物の話ができるだろうと──
円士郎はこの男を私に会わせたいと言ったのか。