金魚玉の壊しかた

遊水が何を言い出したのか、私にはサッパリだったが、

自分ならどうするか考え込んで──


「あるお人はね、自分は迷信を試すより、最期まで大切な人のそばにいると、
迷わずそう答えやがったよ」


考えているうちに、彼は勝手に言葉を続けた。

どうやら私の答えを期待しての質問ではなかったらしかった。


「大したもんだぜ。だが俺は──」

遊水は閉じていた目を開き、

苦しそうに歪めた双眸で、天井を睨んだ。


「俺には、迷信にすがった男の気持ちがわかる。
嫌というほど──よくわかる……」


それは何の話なのだろう。


「例えどんなに小さな可能性でも──その人を救えるのならば、
俺は試したいと思っただろう」


そう言って、
遊水は悲しげに小さく声を立てて笑いを漏らし、


「昔……幼かった頃、母親と二人で旅をしていた。

俺がうわごとで喋ってたって言葉は、その頃に母親との会話で使ってた言葉さ」


と、教えてくれた。


「母親の故郷の言葉だと聞いた。
だからきっと、紅毛の国の言葉なんだろうねェ……」

「母君は、今……?」

「旅の途中で病んで、俺を残して死んじまった。
綺麗な人だった気がするが、今じゃ顔も思い出せねえな」

「あ……すまない」

「いやいや」と力無く笑う遊水の美貌を眺めて、

それは──綺麗な母親だったに違いないと思った。