金魚玉の壊しかた

円士郎自身も
役者並の惚れ惚れする容姿のいい男だが、

ううむ……こういうのも、類は友を呼ぶというやつだろうか。


男が横になるのを手伝って、
もう一度羽織をかけてやり、


私は大きく息をついた。


やたらと跳ね上がっている動悸を何とか押さえ込み、

青ざめた男の顔を覗き込んだ。


「大丈夫か? 吐き気はあるか?」

「いや……少し楽になった」


男は血の気の失せた額に汗を滲ませたまま苦笑いした。


「やれやれ、一晩寝たらもう平気かと思ったんだがね」

「馬鹿者が……おそらく後二、三日は苦しむことになるぞ」

「どうやらそのようだ」


先程手にしていた書物を指して、彼はそう言った。

私の胸に、虹庵がかつて私に対して抱いたのと同じ種類の驚愕が広がる。


この男は──本草学の書物が読めたのか?

漢文で書かれているものだが……。


そう問おうと口を開きかけると、


「安心したぜ」


ふふ、と笑って目を閉じ、男はそんなことを言った。


「安心? 何のことだね?」

意味がわからず、私は眉を寄せて、


男は再び開いた緑の輝きで私を見つめ

口の端をにやっと吊り上げた。


「ふふ、少なくとも後二、三日は、
あんたみたいな美人と一緒にいられるってことだろう?」


う──!?


妖しくすがめた目で捉えられ、
さらりとそんな言葉を口にされて、

せっかく落ち着いていた私の心の臓は跳ね上がる。


「へ……減らず口を叩いていると、放り出すぞ。
大人しく寝ていたまえ!」


頬に朱が上るのを感じつつ私がわめくと、

あっははは! と肩を揺らして、おかしそうに男は笑った。


私にはそれは、随分と垢抜けた眩しい笑い方に思えた。