金魚玉の壊しかた

「わ──私が、わかるか?」


青白い朝の空の明かりがかろうじて差し込む、薄暗い長屋の中で

吸い込まれそうなその輝きに向かって問うと、


男がもう片方の手を伸ばして、私の頬に触れた。

ふわりとその手が頬をなでて、



彼は微笑を浮かべた。



「Alainn──」



吐息のような呟きが唇から漏れ、
力を失って私の頬から手が滑り落ちる。


私の手を握る右手の力だけが、僅かに残された。


安心した様子で目を閉じ、静かな規則正しい寝息を立て始めた男の顔を

私は魅入られたように見つめ続けた。



背中がぞくっとする。


今さらのように、気がついた。

変わった容貌だが──




この青年は美しかった。




まるでこの世の人ではないかのように。




眠りに落ちた彼の手を握ったまま、

私はどきどきと、胸がうるさく音を立てるのを感じていた。