金魚玉の壊しかた

聞けば、その少女は結城のおつるぎ様だった。


結城のおつるぎ様というのは、これまたこの城下に住む者の間では有名人で──

二十一世紀風に言うところの、シンデレラ・ガールだ。


女の身でありながら、大の男をも叩き伏せる凄腕の剣の使い手。

結城家の現当主であり、鏡神流の師範でもある結城晴蔵──つまり円士郎の父親にその才能を見出され、
庶民の出でありながら結城家に養女として迎え入れられた少女。

つまり円士郎にとっては義理の妹に当たる。


噂では、まさに剣の化身、

剣術の腕前は円士郎をも凌ぐとのことだが……


驚きだった。


それがこんな華奢で可憐な美少女とは。


そして驚愕と同時に──私は何とも奇妙な気分になる。

城下の有名人二人とこうして立て続けに知り合うことになるなど、少し前までは考えもしなかった。


おつるぎ様は、巷の噂からは想像もつかないほど

あどけなく、
小柄で、
ほっそりした体つきの、
か弱そうな──

何というか、見た者の保護欲を無性にかきたてる愛らしい少女だった。


こう、思わず抱きしめて頬ずりしたくなるような、
小動物的な可愛らしさがあるというか……


女の私ですら、こういう印象を抱くくらいだ。


実際、円士郎はこの義妹が可愛くて仕方がない様子だった。


おつるぎ様に対する態度や言葉遣いは、

私と接する時とは明らかに違った──

優しく、
親しみのこもったもので……



彼はあの、少年のような目をしていた。