この夜も、例によって私の長屋の戸は深夜にいきなり蹴り開けられた。

強盗以外にこんな真似をする者は当然一人しかおらず、戸口に立っていたのはいつもどおり結城円士郎だった。

私もなんだか慣れてしまっていて、鶏をさばいていた包丁を握ったまま彼に文句を言ったりして──

──こんなことに慣れるのもどうかとは思ったが。


しかしこの夜は、これまでとやや違っていた。



円士郎は一人ではなかった。


彼は肩に、法被に股引という町人風の格好をした男を担ぎ上げていて、

そして彼の後ろからは、ひょこりと小柄な少年が顔を出した。


奇妙なことに、こちらは寝床から抜け出してきたような寝間着姿で、

抜けるように白い肌を戸口の闇に浮かび上がらせ、
つややかな漆黒の総髪を円士郎と同じように一まとめにした──

驚くべき美貌の少年だった。


まだ元服前というところか。
円士郎の更に上を行く美童だ。



結城家の御曹司と、町人風の男と、寝間着姿の少年。


どういう組み合わせの三人なのかと首を捻り──、



──私は息を呑む。



諸君らの時代のように明るい電灯というものがないこの時代、

夜の闇は深い。

暗い灯りではすぐには気がつけなかったが、


よくよく見ると彼らは三人とも血まみれだったのだ。