へえ、と円士郎がガラス玉の中をくるくる泳ぎ回る金魚を眺めて感嘆の声を漏らした。

「綺麗なもんだな。このまま持って帰って吊して楽しめるのか?」

「女は喜ぶぜ」

遊水がニヤニヤしながら言うと、

「もらう」

と、円士郎は即座に受け取った。

私は思わず吹き出した。


「こいつ、ヒレが長いな。留玖が喜びそうだ」


円士郎は、かつて私に語った思い人の名を口にして、日差しを受けて輝きを撒く金魚玉を無邪気に眺めた。

びいどろの中の金魚は透明な水の中で、まるで天女の羽衣のように薄く透き通ったヒレをひらひらと動かしている。


「金魚玉の金魚はやがて死ぬ」


ガラスの中の美しい世界に見入っている円士郎に、遊水がぽつりと告げた。


「だからしばらく愛でたら、広い場所に移してやってくれ」


円士郎は頷いて「礼を言うぜ」と、笑顔を見せた。