金魚玉の壊しかた

ここは城下でも有名な甘味屋で、円士郎がお気に入りの店だと前に聞いていた。

「おお、三舟屋のその豆大福! 美味いんだよなァ」

私の食べかけの大福を指さして円士郎が言った。

「俺もちょうど買いに寄った所なんだよ」

「俺は、あんまり甘いのはちょっとな」と、醤油タレの団子を食べていた「遊水」が肩をすくめた。

それでもしっかり私につき合ってここで円士郎を一緒に待ってくれていた旦那様を見つめて、私は自然と笑みがこぼれる。


「鳥英にはこないだ会ったばかりだけどよ、遊水、お前に会うのってほとんどお前らの婚儀以来じゃねえかよ」

円士郎が不満そうに言った。


実際は婚儀の翌々日──

内密な報告だと言って、円士郎が伊羽邸を訪ねて来た時以来ということになるだろうか。


婚儀の前日に私があのススキ野で、何者かの雇った浪人たちに襲われかけたあの事件。

捕まえた連中が雇い主の名を吐いたとかで、どうするかと円士郎が報告を持って来たのだった。


本人の名誉のために伏せておくが、円士郎が告げたのは私との縁組みを申し込んで断られた者のうち一人の名前だった。


要するに単なる腹いせで、花嫁を辱めるか自刃に追い込むことで伊羽家と雨宮家の両方に屈辱を与えたかったらしい。
特に政治絡みで伊羽家と敵対している者の仕業ではなかったようだった。

処分についてはこちらで行うと、敵対者を許さない旦那様は薄ら寒くなるような笑みを含んだ声で言っていたから、犯人は……自業自得のご愁傷様といったところである。