金魚玉の壊しかた

朝の光の中で黙ったまましばらくそうやって抱き合って、

私は彼の腕の中でクスリとした。


「遊水は、もう現れないんじゃなかったのか?」


少し意地悪く言うと、彼の笑っている振動が伝わってきて、


「抱いてる最中あれだけそっちの名で呼ばれりゃァな。現れてやろうかって気にもなるぜ?」


私は顔から火が出るかと思うほど真っ赤になってしまった。

昨日の夜、私は彼を結局その名で呼んでいたのか。


「まァ、屋敷の中ではその名は禁止だが、寝屋の中でだけならそっちで呼ぶのも許してやるよ」


からかうような声音で言われ──

どうやら完敗だった。

うう、クソ……
悔しいが、意地悪勝負では全く勝ち目がないようだ。


「それに、ここ数年遊水として動いてみてよくわかったしな」

「……何がだ?」

少し体を離して、鼻白む私の顔を見つめて、彼はにやっとした。




「俺はこっちが素だ」