完全に膝に力が入らなくなって、私は襖にするすると背を滑らせてその場に座り込んでしまった。
目が潤んでいる気がする。
へたり込んだ私の頬を、彼の指がつうっと撫でた。
「それで? 旦那様を寝屋に一人置き去りにして、何をしてた?」
魔性めいた微笑のまま屈み込み、私の顎を持ち上げて、翡翠の双眸が私を覗き込む。
「ちゃんと説明してもらおうか」
妖しい目つきでそう言って、
不意に金の髪が頬に触れる。
「場合によってはお仕置きだ」
再び彼は私の耳元に口を寄せて囁いた。
抗う気力を根こそぎ奪って、自ら進んで言いなりになりたいと思わせるような、
理性を麻痺させ官能をくすぐる悪魔の声だった。
長屋で過ごした時とも、昨日の夜とも異なる、
完全に豹変した態度をとる男に、私は戦慄を覚えながら悟った。
これか──!
私の知らない場所で、普段彼がどのようにして女を口説き落としていたのか。
その恐ろしい片鱗だった。
こんな態度を初めから取られていたら、免疫皆無の私などものの数秒で陥落していただろう。
ううむ……本当に彼は、私に対しては相当手加減した態度で接してくれていたのだと思い知った。
夫婦となった今、もはや遠慮は不要、ということなのだろうか。
目が潤んでいる気がする。
へたり込んだ私の頬を、彼の指がつうっと撫でた。
「それで? 旦那様を寝屋に一人置き去りにして、何をしてた?」
魔性めいた微笑のまま屈み込み、私の顎を持ち上げて、翡翠の双眸が私を覗き込む。
「ちゃんと説明してもらおうか」
妖しい目つきでそう言って、
不意に金の髪が頬に触れる。
「場合によってはお仕置きだ」
再び彼は私の耳元に口を寄せて囁いた。
抗う気力を根こそぎ奪って、自ら進んで言いなりになりたいと思わせるような、
理性を麻痺させ官能をくすぐる悪魔の声だった。
長屋で過ごした時とも、昨日の夜とも異なる、
完全に豹変した態度をとる男に、私は戦慄を覚えながら悟った。
これか──!
私の知らない場所で、普段彼がどのようにして女を口説き落としていたのか。
その恐ろしい片鱗だった。
こんな態度を初めから取られていたら、免疫皆無の私などものの数秒で陥落していただろう。
ううむ……本当に彼は、私に対しては相当手加減した態度で接してくれていたのだと思い知った。
夫婦となった今、もはや遠慮は不要、ということなのだろうか。



