金魚玉の壊しかた

私は吃驚仰天してしまった。

なんだ? 何事だ?
私が今言ったのは、下女を泣かせるような内容だったのか?

パニックに陥りかける私の前で、

「何とお優しい……!」

と、下女は涙を拭きながら言った。

「……は?」

ポカンとする私の顔を下女はしげしげと見つめた。

「そんなに目を腫らすほど泣かれて……昨夜はさぞかし恐ろしい思いをなされたでしょうに」

え……?

ぎょっとしつつ、私は自分の瞼を押さえる。

言われてみると、確かに昨日散々泣きはらした目元は、起きた時からパンパンになっていた。

こんな顔を彼に見られるのはちょっと嫌だなと思って、それもこれも私を泣かせまくった彼のせいだと開き直った。


しかし下女の言葉は──
まさか、昨日の夜私が目にした恐ろしい座敷牢の中の光景をこの者も知っているのだろうかと私は緊張して、


「旦那様のご面相はさぞ恐ろしかったのでございましょう?」

と、下女は涙を拭き拭き言った。

「しかも旦那様はご気性も恐ろしい御方。それはそれは酷い目に遭わされたのではございませんか?

ああ、何とおいたわしや……このようにお若くお美しい方ですのに」

再び盛大に下女が泣き出し、周囲からはつられて忍び泣く他の奉公人たちの鼻をすする音が聞こえ始めた。

「わたくしどもで宜しければ、いつでもご新造様のお力になりますから、どうぞお辛い時にはいつでもお声をおかけ下さいまし」

わたくしどもはご新造様の味方ですよと力強く言われて、


私は自分の目が点になるのを感じた。