そもそも生きている世界が違う。 出会って間もないころ思ったように、彼は自分の世界で生きていて、 でも私は、社会に生きていた。 理解できない。 けれど、そんな彼を好きになったのも、また私。 認めたかった。 どうにかして理解したかった。 太宰治を読んだ。 家庭をかえりみない奔放な芸術家の夫に、報われなくとも生涯尽くし続ける。 そんな妻になってもいいと思うほどに、私は彼を好きだった。