「まおちゃん」


母さんか……。 いつもも思うんだけど、いい加減にノックする事を覚えてくれ。


「何ですか?」


重そうにまおが体を起こして、ドアから顔を覗かす母さんに向けた。


「今日は“ここ”に泊まっていいよ。
さっきまおちゃんのお父さんに許可も取ったから」


……… 泊まる!? 誰が、どこに。

まさか…… まおがか?


「いい? まおちゃん?」


「えっ!! あたし、今日いっくんの家に泊まるんですか?」


まおが驚いたように、声をあげた。


俺も驚いたし…… まおが驚くのも無理はないと思う。


「そうよ、女の子一人じゃお父さんも心配だったみたいだからね」


なんとなく…… おじさんの気持ちが分かるかも。
理央ちゃんなら一人でも大丈夫な気がする。

でも、まおはなー。 一人じゃダメそうだ。 知らない人が来ても普通に玄関を開けそうだ。


そう考えたら俺んちに居た方が安全か。


「今から樹を連れて着替えとか取りに行ってきな?」


「いいんですか?」


「いいのよ、だって“まおちゃん”ですもん」