ガラッ

衣装室の奥で仕事をしていたら、誰かがドアを開ける音がした。

誰だろ?真比呂さんかな?

そう思って、入り口の方へ行った。

「浅姫。」

そこにいたのは、課長だった。

ビックリして何も言わず、逃げようとしたら、課長に腕を捕まれて逃げらなくなった。

「聞いて。浅姫。」

いやっ。何も聞きたくないっ。

捕まれてる腕を必死に解こうとする。

「聞けって。」

課長が掴んでる腕をグッと引っ張って、私は課長の胸に飛び込む形になった。

課長がぎゅって抱きしめる。

「一緒にいたのは、アニキの婚約者だから。」

えっ?アニキ??

「あの日、アニキのことで相談あるって言われて、酔っぱらって家まで送った。」

「・・・・」

「酔っぱらってて、アニキと間違って抱きつかれた」

「・・・・」

「浅姫を裏切るような事は何もしてない。」

「・・ほ・・んと?」

「本当。愛してるのは浅姫だけ。」

そう言って、顔を覗き込まれる。

でも、課長と目を合わせられない。

「浅姫?」

「・・・・・」

「顔上げて。」

課長の手が、私の顎を支える。

顔を上げた私を待ってたのは、課長の優しいキスだった。