最後の恋

結局、朝も課長はマンションには帰ってこなかった。

でも、いつも通り仕事に向かう。

ホテルに来たら、課長と会う確率はグッと上がる。

同じ職場だし・・。

でも、会いたいと思う気持ちと会うのが怖いという気持ちが交差する。

会うのが怖い。

それが今の正直な気持ち・・・。

自分の中で最悪の出来事を予想して、心の準備をする。

でも、現実になって欲しくない。

それが、本音。

恋をすることがこんなにうれしいって、楽しいって、久しぶりに思い出したのに。

失いたくない・・・・。

いつの間にか、私はこんなに弱くなっていたんだと、自分で気づく。

「おはようございます」

フロアに入り、真比呂さんに今日は衣装室で片付けをすると告げ、私はフロアから逃げるように衣装室にこもる。

ここにいれば、課長が、というか、ブライダル関係者以外は来ることはない。

一人で心を落ち着けるには、静かだし、一番の場所だ。

黙々と片付けをする。

今日は、ここに泊まろう。

マンションのボイラーが壊れたとか、何とか言って。

そしたら、課長が帰ってきても、会わない・・・。

心の準備が出来たら、会ってきちんと別れを告げよう・・・。

昔みたいに、職場を変えることは出来ないけど、きちんと別れを告げれば、また上司と部下に戻れる。

私は一人、覚悟を決めていた。