「失礼いたしました。」

課長はそれだけ言って、頭を下げ、また顔を上げて斗馬の顔を見る。

「・・・・」

斗馬も何も言わない。

少しの沈黙が流れて、私は言い訳するかのように課長に話し出していた。

「あ、、、あのですね課長・・。倒れたのはこちらの花嫁さんで・・・。」

課長も、斗馬も顔を見たまま視線を反らさない。

「あの、、美空さんは「あなたは浅姫の何ですか?」

私の言葉を遮って、話し始めたのは斗馬だった。

「浅姫の恋人です。・・勿論、あなたのことも知っています。僕は何があっても、浅姫のこと裏切ったりはしませんよ。」

そう言うと、課長は、「失礼しました」と、その場から離れた。

「・・・・」

「浅姫のこと、裏切らない、、か・・・」

斗馬はそう言うと、一度天井を仰ぎ、私を見た。

「浅姫、今幸せか?」

今・・・?

「うん。やっと。見つけた。」

それはたぶん本心。

今までは、信じられなかった新しい恋なんだ。

まだ、出会って半年も経ってないのに、課長が、ううん、陽輔が教えてくれたんだ。

「そっか・・・。」

もう、言葉はいらないと思った。

もう、斗馬も私もきちんと、過去にけじめがついた。

「美空さんは、413号室で休んでいます。それから・・プランナーとして素敵な式になるように、願っています。これ・・」

そう言って、部屋の鍵を斗馬に渡す。

「無理しないで下さい。と美空さんに伝えて下さい。ではここで・・・」

そう言って、私は今来た道を歩き出した。