最後の恋

すぐに会場に戻る気力がなかった。

誰もこなさそうな非常階段で、少し休んだ。

もう7年。

いや、まだ7年なのか・・・

心がこんなに斗馬を覚えていた。

もう、忘れたと思ってた。

もう、一生会わないと思ってた。

まさかこんなところで再会するなんて・・・・。

会わなければ、忘れたままでいられたのに・・・・

「ふ~~」

ため息をついて、深呼吸して会場に戻った




それからの私はいつも以上に仕事に取り組んだ。

斗馬と彼女さんが戻って来てもわからないように。

戻ってきても声を掛けなれることがないように。

昔みたく斗馬のことなんて忘れるかのように。

気が付いたら、昼食も忘れてた。

時間は16時。

後1時間でフェアは終わる。

この時間なら、抜けても大丈夫だろう。

「ごめん、ちょっとお昼行ってくる」

近くにいた坂野さんに声を掛けて、会場を出た。

そのままホテル内の売店でサンドイッチとカフェオレを買う。

休憩所で食べるか・・・

休憩所の椅子に座ると、頭の中にはまた、斗馬がいた。

サンドイッチを持ってた手はいつのまにか止まったままだった。