最後の恋

「スイマセン」

会場内を歩いていると、声を掛けられた。

「はい」

笑顔で振り向いた私の顔は硬直した。そして体も。

「えっ?」

むこうも一瞬顔が引きつったように見えた。

そこには、元カレの斗馬がいたのだ。

もちろん、女の人と一緒に。

「模擬挙式って・・・」

斗馬の隣にいる彼女が何か聞いていたが、私の耳には入ってこなかった。

目の前に斗馬がいると、わかっただけで急にドクドクと心臓が早く動きだす。

私はそこにいる斗馬から視線を反らせなくなっていた。

彼女が何か聞いていた時間はほんの数秒だったっと思う。

でもその数秒が私には何時間にも感じた。

「・・・なんですか?」

斗馬から目が離せなくなってた私は彼女の言葉で我に返った。

「えっ?」

「模擬挙式ってどこでやるんですか?」

彼女は私達のことは気づいてないみたい。

「・・あっ。模擬挙式ですね・・・」

慌てて仕事モードに切り替える。

「模擬挙式は、ホテルの隣のチャペルで行っています。もう始まっていますが、ご覧になりますか?この後、15時半からもありますけど・・・」

「え~~。もう始まってるんだ~。どうしよ~?」

彼女は隣の斗馬を見る。

彼女の視線を感じて斗馬も答える。

「みーが決めて良いよ」

斗馬の話し方昔と変わらない。

その優しい視線も。

久しぶりに見た斗馬に、胸が苦しかった。