「浅姫。」

直哉が背を向けたまま話し始める。

「ん?」

「結婚したくなったか?」

直哉は私が結婚に憧れていないことは知ってる。

「ならない。」

「そうか・・・」

直哉は、また来た道を戻り続けた。






私は、結婚にあこがれを持ってない。

高校生の時、花嫁のバイトをしたにもかかわらず。

いや、あの時は結婚に憧れてた。いつか、こんな花嫁さんになりたいなって。

高校生ながら、早く結婚したいなって。

好きな人さえ、愛する人さえいれば、

もう何もいらないって思ってた。

でも、現実はそんな甘いものじゃないんだ・・・。

結婚は両家の問題なんだって、私は現実を突きつけられたんだ。










6年前1月。












「父さん、母さん。こちらが、真野 浅姫さん。」

紹介されて頭を下げる。

「浅姫、こっちは、見てわかると思うけど父と、母」

斗馬が私の顔を見てニッコリ笑った。

「は、初めまして。真野浅姫です」

緊張しながら、挨拶する。

斗馬の実家の和室。

向かいには、こちらの緊張した顔のお父様とお母様。

緊張しないわけがない。

テーブルの下でギュッて握った手には変な汗かいてる・・・。

そんな私を見て、斗馬が両親には見えないように、あたしの手を包むようにギュッて握ってくれる。

とっても、あったかいこの体温を感じると、私は安心できる・・。