私が連れて来られたのは、花嫁衣装がたくさんある衣装室だった。

私を連れてきた人は、私を女の人に頼んで、「後は任せたぞ」といってどっかに行ってしまった。

「こんにちは。」

声を掛けられ、顔を上げる。

その人は今にも泣きそうな私の顔を見て、ビックリした顔になる。

「どうしたの?大丈夫だよ?」

あまりにも優しく、声を掛けられた私は、堪えきれず泣き出してしまった。




私が泣き出すと、その人はますます困ったようで、泣きやむまで優しく頭をなでてくれてた。

そしてゆっくり、私の話を聞いてくれた。

私の話は、その女の人(名前は奥田さんというらしい)にも、ビックリだったらしいが、
恥ずかしながら、全部私の勘違いだった。

今日は、この式場のポスター撮影があって、私はその『花嫁』なのだとか。

だから、叔父さんはバイトと言ったのだ。

で、さっきの男の人は奥田さんの同僚で仲野さんと言うらしく、花婿ではなかった。



奥田さんは、目も腫らしてしまった私にタオルで目を冷やしてくれて、かわいくしてあげるから。と私にメイクをしてくれた。

そして、人生で初。

ウェディングドレスに袖を通した。

奥田さんが、私のイメージと選んでくれたのは、繊細なビーズと、リボン風になってる裾がかわいいオフホワイトのドレスだった。

ドレスを着て、鏡の前に立つ私はまるで別人。

「自分じゃないみたい・・・」

思わず、口からこぼれる。

奥田さんはふふっと笑って、「完璧」とつぶやいた。