幾千の夜を越え

反省すべきなのは解っていた。

確実に俺が彼女を見誤ったのだ。

見た目に惑わされていたんだ。

でも俺は、
彼女に優しくすることは出来ず。

｢止めろよ。そんなムリしたって自分が苦しむだけだろ？｣

よく見りゃ緊張からなのか
小刻みに震える彼女に
気付かない振りをする。

｢自分押し殺して…頑張らなきゃ一緒にも居られない相手なんかに気持ち残したりするな｣

酷く冷たいことを言ってる。

だが、
俺が振り向くことがない以上…。

｢見た目が変わったところで中身は変わらねぇんだ演じるしかねぇんだからな…｣

片想いの辛さは知り尽くしてる。

行き場のない苦しみを解ってる。


どんなに想い続けたところで…。

いくら望んだところで…。

欲したところで手には入らない。


この想いを…
悟られてはならぬ。
持ち続けてはならぬ。
捨て去らねばならぬ。

尊のお傍にお仕えする為に…。

｢右近！｣

｢えっ？｣

｢あっ…否…じゃあな｣

今度こそその場に
彼女を置き去りにする。

ポケットに両手を突っ込み。

その中で拳を握り締めた。

感情移入し過ぎだろ？

いつの間にか
右近の心情に摩り替わっていた。