幾千の夜を越え

気の早いクラス連中や
手間隙かける文芸部が
準備を始め出す頃合い。

俺もまたいつも通りの放課後。
重い足取りで美術室に向かう。

一日中
無駄に頭を使ったせいか
心なしに頭も重かった。

盛大な溜め息を吐き
気合い入れににガラッと
いきおいよくドアを開ける。

「あっ右川君丁度良かった!」

部長が振り返り様俺を確認した。

その顔は喜びを隠し切れずに
満面の笑みを溢している。

「上機嫌だな?」

「分かる?」

「フフ」っ声まで漏らしている。
気付かない振りをする方が苦だ。

「もう少しで完成なの♪」

「嗚呼、絵か?良かった…」

「本当に文化祭迄に間に合わないと困ると思って早くからモデルにお願いしたかいがあった」

鼻歌まで聞こえてきそうな
部長の向こうには対照的な
部員等の苦渋の表情がある。

「皆も完成に近くて後は仕上げを残すだけなのに私に遠慮してか、言ってくれないから気付かなくて振り回してごめんなさいね?」

多分…
部長に遠慮してたわけじゃねえ。

引き留めておきたかったからだ。

「モデル本当にありがとう。
後は本番を楽しみにしててね?」

「あっそ…じゃ帰るわ」

あっさりと引き返した。