幾千の夜を越え

覚醒…
やっぱ全ては右近が握ってるってことなんだよな。

「左山…お前は前回覚醒しきれず今回は早々に覚醒したんだよな?何か理由があんだろ?」

「理由なんてモノはない!
ええか、前回覚醒出来なんだのは俺が甘えとったからに過ぎん」

甘えって…。
俺は別に甘えてるつもりはねえし

「左近としては未熟な俺が右近の枷となり戦いに支障をきたすのが左近の為に敗けたと思われるのが怖くて認めへんかっただけや…」

右近を真っ正面から受け入れる
気持ちの整理も出来てる。

戦いってのが
正直よくわからねぇんだけど。

古書の文面に敵と思われる表現はなかったはずだ。

確かに
呪いの呪符やらは尊に届いてたが

あれは近隣住民の妬みみてぇな物だったわけだろ?

近隣住民…なのか?

土地的にも土壌的にも
気候にも恵まれ

飢饉はおろか疫病にも縁遠い
氏神への暴徒…。

待て待て
相手が人間だというなら
右近や左近の力など不要
左近が恐れる必要もない

仮に
右近や左近の力を持たなければ
対抗出来ない相手だとしてだ…

向こうにも同じく力がある。

俺達と同等か、
それ以上に…。

「相手は人間じゃねぇのか?」

「知らん…」