心配を掛けたくねぇからと言う、葵を取り敢えず家に連れ帰ったが

「悪ぃな…。ハウスクリーニング来んの、明日だからさ…散らかってけど…適当に、座ってろよ」

最後を強調して着替える為に、
部屋に向かった。

序でに、
以前NYの土産にと買ったまま、渡せずに閉まって置いた葵の服を一式引っ掴み、

リビングへと戻る。

座って待ってろと、
言っておいたにも関わらず
食べっぱなしの弁当のゴミを、
片付けてる葵の姿に、
思わず笑いが漏れた。

やっぱな…。

「座ってろって言っただろ?」

俺を振り返るなり、

「こんなんばっかじゃ…
体に良くないよ?」

顔をしかめた。

「んな事より、風呂入って来い」

手にしてた服を突き出す。

受け取ったそれを抱え、

「慎ちゃん…私から離れないでよお願いだから私の傍に居てよ。
ずっと慎ちゃんの傍に居たいよ」

崩れ落ちた。

声にならない声で泣き叫ぶ葵を、…抱き寄せた。

「なぁ葵…幼馴染みとしてしか、傍に居られねぇのか?」

見上げる葵の瞳を捕え、

「幼馴染みの関係は卒業しても、離れらんねぇ関係はあんだろ?」

見据えて告げる。

大きく瞬きを繰り返す葵に、

「なぁ…葵の言う、理想の王子様って何なの?」

ずっと胸に引っ掛かり続けてる、疑問を投げ掛けた。

「王子様は…強くて優しくて…、何時でも私の味方で居てくれて、いつも私のことを見守ってくれてどんな時も私だけ見ててくれて。困った時には必ず助けてくれる。…私が傍に居て欲しいって言えば絶対に居てくれる人の事だよ?」

戸惑いがちに始めた説明も、
逸しか熱を帯出して…、

やがてそれは、
俺に対する望みへと、
形を変えて行った。