その頃、街ではひそかに都市伝説が囁かれていた。

「蚊が人の体内に卵を産みつける」

「卵が還ったら体を食い破って出てくる」

「卵が還るとき、一瞬人の体が少し膨らんで見える」
「自覚症状は体の内側が痒い気がすること」


「まれに寄生されたまま生きている人間もいるらしい」

そんな気持ちの悪い噂だ。
あくまでも噂。

通常蚊は血を吸うのは雌で、産卵期に蛋白質を必要として吸うといわれている。蚊にさされても卵を産み付けられているわけではない。


しかし、洸は目の前で人が破裂し、奴らが数十匹産まれるのを見たことがある。

一匹一匹の大きさが尋常ではなかった。成人男性の握りこぶし大だろうか。

異常な大きさの蚊の群れの羽音・・・。
思い出してもゾッとする。


しかし、奴らの繁殖方法が分からない。そんなでかい蚊に刺された話は被害者の近辺では全くでてこなかった。

刺されていないのに、卵を産みつけられる・・・・。