ー最上階ー
静かにエレベーターの扉が開いた。

高級感のある少し重めのドアを押す。
「お疲れ様。洸(あきら)さん」
バーテンダーが話かけてきた。男の癖に相変わらず綺麗な顔をしている。秦を見て洸は思った。

「カルヴァドス、シャンパン割」
挨拶は無しにして、注文だけする。

このBarは、良い酒と氷、飲み口を重視されたグラスを気に入って客が来る。それと普通の客は入れないため、秘密を守りたい者の使用率も高いようだ。
 
洸の今夜のドレスは艶のある黒。
シンプルだが、見るものが見たら高級品とわかる。
胸元が大きく開いていて体にフィットするデザイン。彼女自身の美しさがシンプルなドレスでより凄みを増している。

自分の見せ方を良く知っている。洸を見て、秦はそう思いながらグラスを静かに運んだ。

「ブレスレットが壊れたかも」

洸の言葉に秦の綺麗な顔が、一瞬歪んだ。

「何回使った?」

静かに責める。客としてきてる時に敬語じゃなくなってるのはかなり、秦が焦っている証拠だ。

「今日、三回」
洸は正直に答えた。