母親に買って貰った熊の縫いぐるみを、いつも持って泣いていた阿南。




寝るときはいつも一緒。




今もボロボロになった縫いぐるみと一緒に寝ている。



新しいのを買っても、その縫いぐるみを捨てられない。




母親に買って貰った唯一の物だから。




『阿南、ほしいなら買ってやるぞ。』




嬉しそうに笑う阿南。




「この大きなのじゃなくてこれがいい。」




阿南が欲しがったのは、小さめの親子の縫いぐるみだった。




母親の熊だろうか、小さな熊を抱っこしてる。




「良介は笑わないの?」




『何で?』




「だって、高校生にもなって縫いぐるみだなんてさ。」




『笑わねぇよ。ほら貸せよ。』




俺はレジでお金を払い、縫いぐるみを阿南に渡した。



「良介、今日は優しいんだね。」




『バ〜カ、俺は阿南にはいつも優しいの。』




阿南が嘘ばっかと笑った。