「紗代、愛してる」


そう言ってまこちゃんがあたしの左手の薬指にそれをはめた。



***


スキップをしながら冬の寒い道を進む。


あたしの左手の薬指には指輪。

まこちゃんからの特別な指輪。


そして、横にはまこちゃんがいた。


どうやらまこちゃんは少々緊張気味の様子。


「なんていえばいいのかな」


ため息交じりに出てきたその言葉にあたしは微笑んだ。


『ピシッとさ、“娘さんを僕に下さい!”とかは?』


「・・・えぇ?」


ポリポリ頭をかきながら言うまこちゃんの腕にあたしは自分の腕を組んだ。


『・・あたしへの愛が伝わればどんな言葉でもいいんじゃない?』


そう言うと少し頬を染めてそっぽを向くまこちゃん。

そんなまこちゃんが愛しい。




あたしの左手に光る、婚約指輪。

でもあたしはずっとまこちゃん家の合鍵を持ってるつもりだよ?


だって、あれもあたしとまこちゃんの愛の証だもんね。







「お父さん、紗代さんを僕に下さい」






―END―