お手洗いから出ると先生が腕を組んでこちらを見ている。
「はい、すみません」
言ってしまった。
でも今更後悔したって遅い。
「妊娠、しているんだな」
「はい。でもあたし別に先生に認知して欲しいとか思ってません。
この子は、あたしが一人でしっかり育てますから」
先生に何か言われるのが怖くて
つい勝手に喋ってしまう。
「それと、養育費とかも」
黙れ、黙れ、黙れ!
心の叫びはちっとも伝わってなくて
ただただ出てくるのは余計な言葉ばかり。
「・・青山」
「それでは仕事に戻りますので」
まだ時間があるくせに
これ以上一緒にいる事が出来ないあたしは
一礼をして今度こそ職員室へと向かう。
これでいい。
先生に迷惑はかけられないもの。
先生は
もちろん追いかけては来なかった。


