「坂上坂上っ!」
教室に入るなり、あいつは俺の元へと駆け寄ってきた。
「……なんやねん」
ため息混じりで聞いてみるが、こいつの言おうとしている事はだいたい察しがつく。
「今日の乙女座、5位やったで!」
ほらな、やっぱり。
「お前なぁ……そんな微妙な報告いちいちしてくんなや」
「5位やで、5位!微妙ちゃうやん」
俺にはこいつの基準がわからない。
普通1位〜3位が良くて、11位か12位が悪いって感じじゃねえのか。
5位って……微妙すぎるだろ。
「で?内容は?」
「乙女座の可愛い女の子に優しくしなさい、だって」
なぜかニヤニヤしている。
アホだ、こいつは。
「うそつけ」
「へへへ。ばれた?ホンマの内容は、敵に気をつけろ、やって」
敵ってなんだろね〜、なんて呑気に笑っているあいつを見ていると、急にクラスメイトの佐野が近寄ってきた。
「半澤さんって、乙女座?」
「うん!」
「たしかに、乙女座っぽいね」
「ホンマに!?」
佐野のキザな台詞に反応するあいつ。
アホやろ、アホ。
楽しそうに話している2人を見ていると、なぜか無性に腹が立つ。
俺のイライラが最高潮に達そうとした時、佐野は俺の方をチラッと見て去っていった。
口元を少し上げた挑発的な顔。
佐野あいつ……。
「なぁ聞いた!?乙女座っぽいね、やって〜」
尚も調子に乗っている彼女。
「お前のどこが乙女やねん」
俺の口からは、思ってもない言葉が出てくる。
「坂上に言われたないわっ」
どうしてだ。
俺はどうしても、こいつの前だと素直になれない。