童曲の音色が響いていた。
懐かしい旋律とは僅かに違って寂しい音色に変わっている。
ただ、僕にとって懐かしさを覚えてしまう物だった。
幾星霜も変わらない物なんてあるのだろうかと、目を閉じながら考える。季節でさえも留まらない四季があって、変動しないものなんてないのかもしれない、と。ただやはり、答えを出せられるわけでもなく、彼女の音色を聞いている。
悲しい音が響いている。
彼女が奏でる淋しいMelody。懐かしいものの、彼女の辛い気持ちが出てしまう。きっと、彼女は憂いの表情をしているんだろうと、僕は目を瞑っている。
突然に、彼女の奏でる音に集中してしまっていたせいか、この世界とはまた別の世界に引き込まれていく。
僕は青白い「氷の世界」に辿り着いていた。
そこは何もない荒野。
もちろん、自分が独りだけ佇んでいる。
冷たく尖る居場所だ。枯れ木しかなく、空を埋め尽くす真っ白な雪や雹であったから「氷の世界」だと例える。
世界に引きずられると僕は言う。でも、氷の世界は想像の産物なのであろう。
そう、彼女が奏でる音とおんなじ、Melodyで寂しさを表してしまったように、僕はこの氷の世界で自身の憂いさなどを映し出してしまっていると思う。そう、それだけのことなんだ。
ああでも、答えを見つける。
僕自身が消えない限り「氷の世界」は変化をもたらさない物なのだ。
そう考えて、氷の世界の僕は目を開けていく。
やっと、氷の世界の風景は一転する。
淡い音色が満たしている教室に辿り着いた。
目の前に音を奏でている彼女をぼんやりと眺めると、思っていたとおり、彼女は憂いの表情をしていたのである。