穂乃ちゃんが門から出て来た。
昨日、持ってたよりも大きなボストンバックを抱えて、まるで家出するみたいな大荷物。
俺は携帯をコートのポケットに入れると、慌てて車から降りた。
穂乃ちゃんは俺の前に立つと、何も言わずに抱きついてきた。
肩を震わせ、嗚咽を吐き出しながら泣く穂乃ちゃんを、俺はギュッと抱きしめた。
「穂乃ちゃん?」
「咲哉さん……私を……拾って?」
「えっ?」
穂乃ちゃん……?
「とりあえず、車に戻ろ?」
俺は穂乃ちゃんをそっと離して肩を抱くと、助手席のドアを開けて車に乗せた。
俺も運転席に乗る。
ここから車を出した方がいいな。
俺は穂乃ちゃんの家の前から車をゆっくり発進させた。



