「俺が赤ちゃんの時に、1度だけ実母が会いに来たことがあったらしんだ……。迎えに来たんじゃなくて会いに来ただけだけど」


「…………そう……なの?」


「うん……。俺をギュッと抱きしめて……ゴメンねって何度も謝りながら泣いてたって……。実母が迎えに来れなかった本当の理由を20歳になった時に養親から聞いて知ったんだ……」


「えっ?本当の……理由?」


「実母が俺を妊娠中に、実父が事故で亡くなったらしいんだ。

実父母は駈け落ちして結婚したから頼る人がいなくて、

実母は1人で俺を生んだ。

でも1人で育てることは難しくて、

俺を施設の前に捨てたんだ……。

施設だったら衣食住に困らないからって理由だったみたい。

で、働いて少し余裕が出来たら迎えに行こうと思ってたらしい。

でも……働きすぎて体を壊して、

俺が5歳の時に実母も亡くなったんだって……

だから迎えに来れなかった。

養親は園長先生からこの話を聞いて、

俺が20歳になったら話そうって思ってたらしいんだ。

さっきも言ったけど、今でも全く恨んでないって言ったら嘘になるけど、

でも本当の理由を聞いて、少し救われた気がしたんだ……」