「離して……」
穂乃ちゃんは俺に背を向けたままそう言った。
「離さない……」
「どうして?もう…私の邪魔しないで!余計なことしないで!」
穂乃ちゃんは振り向き、そう叫んだ。
歩いてる人がジロジロ見ていく。
歩いてる人には、俺が彼女にフラれた哀れな男に見えてるんだろう……。
彼女に未練タラタラで、嫌がる彼女にすがる哀れな男。
「穂乃ちゃん…車に乗って?」
「えっ?何で?」
「いいから…車に乗って?」
俺は車の助手席を開けると、穂乃ちゃんを助手席に乗せた。
俺も運転席に乗る。
冷えきった車内。
エンジンをかけて、エアコンを"hi"にして車内を暖める。
「どうして…こんなこと……」
穂乃ちゃんは俺の方を見て、そう呟いた。
俺は彼女の問いかけには応えず、車をゆっくり出した。



