「雨は嫌いだな……」



ベッドの中でキミがポツリと呟いた。



「どうして?」



俺は再びベッドの中に入った。



「髪は湿気でペチャンコになるし、外に出ると服が濡れるから…」



俺はクスリと笑った。



「咲哉さんは、雨が好きなの?」


「昔は嫌いだったけどな」



俺も昔は雨が嫌いだった。


雨の日は何故か渋滞になるし、湿気で髪はペチャンコになるし、スーツは濡れるし……。



「昔はってことは…今は好きなの?」


「あぁ。好きだよ」


「どうして?」



キミは忘れてる?


俺は覚えてるよ。


今でもあの時のことは鮮明に覚えてるんだ。



「ん?だって……」



キミに出会った日も雨だっただろ?


それに……。


キミを強くこの手で抱きしめた時も雨だったから――。