チャイムが鳴る前に生徒たちは皆、保健室を出て行った。
ただ1人を除いて……。
「おい!瑞樹、チャイム鳴ったぞ?」
俺はパソコンの画面を見たまま、後ろにいる瑞樹に言った。
「俺、この時間は授業ないからいいんだもん」
「他の仕事があるだろ?」
「他の仕事は残業してするからいいんだよ。早く帰ったって、出迎えてくれる人もいねぇし…」
「だったら彼女、作れば?お前なら黙ってても女が寄ってくんだろ?」
なんて、瑞樹の気持ちを知りながら意地悪なことを言ってみる。
「あのな~…咲哉、俺は彼女作る気ないって知ってんだろ?」
瑞樹が俺の机の傍にある丸椅子に座った。
「知ってるよ。知っててワザと言っただけだから…」
「お前、意地悪だな。そんなんだったらいつまで経っても彼女出来ねぇよ?」
「ほっとけ!」
俺はクスッと笑った。
その時、なぜか彼女の顔が頭に浮かんだんだ――。



