風呂から出ると、閉めたはずの寝室のドアが開いていた。
少し開いたドアから中を覗くと、穂乃ちゃんがベッドの傍に立っている。
「穂乃ちゃん?」
声をかけても返事がない。
中に入り、穂乃ちゃんの後ろに立った。
「穂乃ちゃん、何して…………」
穂乃ちゃんの手に握られていたものを見て、声を失った。
穂乃ちゃんが握っていたものは……。
穂乃ちゃんのお父さんの名刺だったから――。
穂乃ちゃんは手に握った名刺をジッと見つめている。
「咲哉さん……学校で川瀬さんの手伝いをしてたって嘘?」
穂乃ちゃんは名刺を見つめたまま言った。
「…………ゴメン……」
穂乃ちゃんに謝ることしか出来なかった……。



