「これは?」
「この中に100万入ってます。足りなかったら言って下さい」
「結構です」
「でも……」
どうして金持ちは金で解決したがるんだ。
「僕は穂乃香さんを金で買ったわけではありません。バカにするのもいい加減にして下さい。金がなくても穂乃香さんを幸せにすることは出来ます」
「…………」
「彼女が待ってるので、失礼します」
俺はさっさと車に乗り込んだ。
エンジンをかけて車を出す。
ルームミラーから見える穂乃ちゃんのお父さん。
封筒を持ったまま突っ立て、こっちを見ていた。
これでいいんだ……。
俺の帰りを待ってる穂乃ちゃんの元に早く帰ろう。
お土産に美味しいケーキを買って帰ろう。
もうこの家には用はない。
たぶん……いや……2度と足を踏み入れることはないだろう……。