俺が穂乃ちゃんの居場所を告げようとした時、リビングのドアが開いた。
紺のスーツを着た女性と小さな女の子が入って来た。
穂乃ちゃんの母親か?
「パパ~!」
小さな女の子が女性の手を離れて、穂乃ちゃんのお父さんの膝の上に座った。
穂乃ちゃんのお父さんが女の子を抱きしめる。
「あなた?こちらは?」
女性がそう言いながらソファーに座った。
「穂乃香と付き合ってる方だ」
「そう……」
穂乃ちゃんのお父さんが穂乃ちゃんの名前を出した時、女性の顔から一瞬、笑顔がなくなった。
「妻の葉子(ヨウコ)と娘の未来(ミライ)です」
「初めまして。阿川咲哉です」
俺は軽く頭を下げた。
穂乃ちゃんの母親は頭すら下げず、こちらを冷めたような顔で見ていた。



