「私は……やっぱり、暗い箱からは抜け出せないんだ……。光のある場所には行けないんだ……」
再び穂乃ちゃんの目から大粒の涙がこぼれ落ちていく。
「咲哉さん……。私をここに置いて?お願い……」
穂乃ちゃんが手を離し、俺の両腕を掴んだ。
「お願い……。私には……もう……帰る場所がないの……。居場所がないの……」
「穂乃ちゃん……」
「何でもするから!お金が必要ならバイトして払うから!バイトが見つからなかったら……私自身……」
「もう何も言わなくていい!」
俺は穂乃ちゃんの言葉を遮ると、穂乃ちゃんの体を強く抱きしめた。
穂乃ちゃんが言いたいことがわかったから……。
穂乃ちゃんが言おうとした言葉の意味がわかったから……。
聞きたくなかったんだ――。



