「しっかし、驚いたな。待ちくたびれて寝ちゃって…。で、起きたら笑われてさ。誰だよ! って見上げたらあんたなんだもんな」
「……へ?」
男の子の話が見えなくて首を傾げると、男の子は優しさの込められた笑みを見せた。
「ずっと待ってたんだ。あんたのこと」
ずっと待っていた?
「……あたし、を?」
まだ状況が飲み込めなくて、人差し指で自分指して首を傾げるあたしに彼は「うん」と言って話続ける。
「あんた、休みとなるとここに来てただろ? だから俺も毎週ここに通ってたんだ。あんたに会いたくて」
“会いたくて”
彼のそんな言葉に胸がドキンと跳ね上がった。
異性に言われた初めての言葉。
驚きよりも、今までに感じたことのない感情があたしの中を駆け巡る。
「ま、本ばっかりで、俺の存在にすら気付いてなかっただろうけど」
照れ隠しなのか、男の子はそっぽを向いて鼻の下を指で擦った。

