地元を離れて、6年が過ぎた。
6年間、1度も帰らなかった。
実家には帰りたい気持ちはあった。
ただ、地元に帰ることは出来なかった。
新幹線から見える景色が
少しずつ懐かしいものに変わる。
あの頃と何も変わっていない。
「どうしたの」
隣で寝ていたはずの婚約者が
不思議そうに尋ねた。
6年振りに地元に帰ることにしたのは
両親に挨拶をするためだった。
そして、
彼との繋がりを切りたかったから。
婚約者に彼のことを
話したことはない。
薄々気づいてるのかもしれない。
新幹線の生ぬるい熱で
顔を少し赤らませ、
しかし、少し寂しそうに
笑う婚約者が可哀想に思える。
私はこの人のことを
彼以上には愛せない。
「ねえ、彼の話してあげようか」
婚約者はきょとんとしていたが
すぐさま大きく頷いた。
彼の話…
どこから話そうか