「いつまでも書斎に閉じこもっていないで、お庭をご案内して差し上げてはいかがですか?」

「キャベツやじゃがいもが植わっている庭を案内したところで喜ぶものか」

「そんなことないですよ、じゃがいもの花はきれいで可愛くて、一見の価値ありです」

「庶民くさい」と一蹴されて、ユーリの笑顔がこわばった。

中庭に野菜を植えて自給自足を図るというのは、他ならぬユーリの発案だ。

城の中で作物をつくり、自分たちで料理すれば、食事に毒を盛られる危険が少ないと考えた。

グノーとクリムも巻き込んで、土と格闘しながら、それなりの収穫が得られるようになるまでには、二年以上の月日がかかっている。

そういう意味では、咲き誇る大輪のバラよりも、よっぽど愛しい花なのだ。