「ところで、銀の天使はどうしている?」

泥沼に沈んでいくような感覚で目を閉じた時、唐突に耳元に吹き込まれた言葉は、明らかに毒を含んでいた。

(何を知っている?)

イリアの疑問に答えるように、言葉はなおも続いていく。

「三年前の戦場で銀の髪と紫の瞳を持つ天使を拾ったろ? ずいぶん大切にしているそうだが、その天使は、お前にとって、真紅の薔薇よりも魅力的なのかい?」

強引に引きずり出された熱が、冷水を浴びたように冷めていく。

目が合うと、キリシュは優美に微笑んだが、その目は少しも笑っていなかった。