(吐きそうだ)

イリアは無意識に胸元を押さえた。

部屋を満たす香りは、病人の苦痛を和らげるだけでなく、その思考力をも奪っていく。

国王の容態が思わしくないことは、どす黒く変色した顔が、何よりも雄弁に物語っていた。

枯れ木のような手を取って、キリシュは老人の口元に耳を近づけた。

ようやく搾り出された声は、周囲の者には聞こえない。

長年少しずつ盛られてきた毒で、喉をやられてしまっているのだから、聞こえるはずがない。