時はとどまることなく流れていく。

イリアはいつも忙しそうで、離宮にいない時も多いけど、時間のある時は、ユーリに色々なことを教えてくれる。

歴史、医学、薬学、政治学、経済学、兵学、数学……。

「剣だけで自分の身を守れるとは思うなよ」

相変わらず尊大な口調だが、言っていることは間違っていない。

神妙な顔で頷いた時、ハシバミ色の髪と瞳を持つ青年のことを思い出した。

青年の名はグレアムといった。

彼の弟のアランともども、ユーリにとっては、家族以上に近しい存在だ。

グレアムは穏やかで、優しくて、でも、優しいだけじゃなくて……。

名家の跡取りで、ユーリの守役なんていつでも断れる立場だったのに、最後の最後まそばにいてくれた。

見た目も性格も全く違うけど、イリアとグレアムには共通点がある気がする。

でも、気がするだけで、それが何なのかはわからなかった。